日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

急速に進行した炎症性筋線維芽細胞腫の1例

末次 彩子1), 山元 英崇2), 出水 みいる1), 高山 浩一1), 井上 博雅1), 中西 洋一1)

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
1)九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設
2)九州大学大学院形態機能病理学

要 旨

症例は28歳の男性.持続する乾性咳嗽,右胸痛を主訴に近医を受診し,胸部X線写真にて右中肺野縦隔側に腫瘤を指摘された.胸部CTを施行したところ縦隔に11×10 cmの巨大な腫瘤を認め,腫瘍生検を含めて精査をすすめていたが,短期間に増大したため当科紹介となった.腫瘍生検の結果,炎症性筋線維芽細胞腫の診断となったが,当院入院時は心臓浸潤,上大静脈浸潤を伴い右胸腔内に充満する腫瘤にまで増大し,FDG-PETにて多発骨転移,リンパ節転移,副腎転移を認めたことから,手術は不可能と判断した.抗癌剤やステロイド剤による化学療法を施行し軽度の腫瘍縮小効果は得られたものの,その後腫瘍は増大し永眠された.炎症性筋線維芽細胞腫は低悪性度腫瘍に分類されているが本症例のように急速に進行する症例もある.進行期の炎症性筋線維芽細胞腫に対する標準治療は確立されておらず,今後化学療法を含めた治療法の開発が望まれる.

キーワード:炎症性筋線維芽細胞腫, Anaplastic lymphoma kinase(ALK), 化学療法

受付日:平成21年5月21日

日呼吸会誌, 47(12): 1156-1160, 2009