日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

鈍的な胸部外傷後より胸膜炎症状を繰り返した心外傷後症候群の1例

南波 亮一1), 山本 祐介1), 名和 健1), 遠藤 勝幸2)

〒317-0077 茨城県日立市城南町2-1-1
1)日立製作所日立総合病院内科
2)同 外科

要 旨

症例は59歳,男性.2004年8月自宅のベランダから転落し左側胸部を強打した.1年後より3年の経過で,左肩~背部痛,左側胸部痛を5回繰り返した.症状出現時には,採血検査で炎症反応の増加,胸部X線にて左胸水を認めた.2回施行した胸水検査では,炎症細胞の著明な増加を伴う滲出性胸水であったが,各種培養では陰性,細胞診はclass Iであった.症状および胸水貯留はいずれも解熱鎮痛剤を主体とした対症療法にて1~2週間以内に軽快した.原因不明の繰り返す胸膜炎の精査のため,胸腔鏡検査を施行したところ,胸膜面には特記すべき異常を認めなかったが,左側心膜の損傷を認めた.外傷を契機とし胸膜炎・心膜炎を繰り返す心外傷後症候群と考えられた.

キーワード:心外傷後症候群, 心膜切開後症候群, 胸膜炎, 胸腔鏡検査

受付日:平成21年6月9日

日呼吸会誌, 47(12): 1161-1165, 2009