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Article in Japanese

原著

入院後に診断された喀痰塗抹陽性結核症例の検討

戸島 洋一1), 福住 宗久2), 宮崎 健二1), 柴田 雅彦1), 相澤 豊昭3), 酒井 俊彦1)

〒143-0013 大田区大森南4-13-21
1)労働者健康福祉機構東京労災病院呼吸器内科
2)国立病院機構災害医療センター呼吸器科
3)公立阿伎留医療センター呼吸器内科

要 旨

結核の院内感染対策は,管理体制,環境管理,呼吸保護の3つの柱から成るが,最も上位にあるものは管理体制の整備であり,特に早期診断,早期隔離の重要性は論を待たない.当院で10年間に診断した結核患者は126名で,うち感染性の強い喀痰塗抹陽性患者は51名であった.51名中26名が入院後に診断されており,うち15名が入院時に結核を強く疑われておらず,院内感染源として問題となった.15名の平均年齢66.3歳,入院時の診断は肺炎が9例,その他が6名で,入院後の診断までの日数は3日以内11例,4~7日2例,8日以上2例であった.救急外来からの入院または呼吸器内科以外への入院例が12例を占め,入院前診断のためには結核を常に疑う姿勢の啓蒙を呼吸器科以外の医師へも行うことが必要と考えられた.また,未診断の患者が入院した場合の安全対策として一般病室の換気についても配慮する必要があり,N95マスクの適合性についても検討が必要である.

キーワード:結核, 感染対策, 早期診断, 診断の遅れ

受付日:平成22年5月13日

日呼吸会誌, 48(11): 803-809, 2010