日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (1022k)
Article in Japanese

症例

孤立性気管支乳頭腫由来と推察される肺扁平上皮癌を合併したサルコイドーシスの1例

漆山 博和1), 山内 康宏1), 鈴木 智史1), 春原 光宏1), 幸山 正1), 大石 展也1), 深見 武史2), 中島 淳2), 牛久 哲男3), 太田 聡3), 深山 正久3), 長瀬 隆英1)

〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1
1)東京大学医学部附属病院呼吸器内科
2)同 呼吸器外科
3)同 病理部

要 旨

症例は60歳男性.臨床的診断群サルコイドーシス疑いとして経過観察中に,右上葉気管支周囲リンパ節腫大・気管支内腔の閉塞を認め,経気管支腫瘍生検にて扁平上皮癌と診断を得た.右上葉切除,肺門縦隔リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,気管支内に突出するポリープを認め,孤立性気管支乳頭腫由来の扁平上皮癌であることが推察された.肺門部の腫大したリンパ節をはじめ,ほぼすべてのリンパ節内全体に多数の類上皮細胞肉芽腫形成を認めた.肺内には気管支血管束周囲に類上皮細胞肉芽腫を散在性に認めるのみで,癌の転移を認めなかった.術前の検査で,FDG-PET/CTを含めた画像診断ではサルコイドーシス肺病変と肺腫瘍の鑑別が困難であった症例で,気管支鏡検査の重要性を示唆するとともに,孤立性気管支乳頭腫由来と推察される扁平上皮癌を合併した稀有な症例であったため,今回報告する.

キーワード:サルコイドーシス, 気管支乳頭腫, 扁平上皮癌, FDG-PET/CT, 経気管支腫瘍生検

受付日:平成22年2月3日

日呼吸会誌, 48(11): 815-820, 2010