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Article in Japanese

症例

良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚の1剖検例

芳賀 高浩, 中島 有紀, 北村 淳史, 黒田 文伸, 滝口 裕一, 巽 浩一郎

〒260-8677 千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
千葉大学医学部呼吸器内科

要 旨

症例は35年間の職業性石綿曝露歴を持つ,65歳の男性である.2001年,近医を呼吸苦を主訴として受診した.胸部単純X線写真にて両側胸水がみられた.胸部CTにてびまん性の胸膜肥厚,両側胸水,心嚢水がみられたが,肺野には異常所見はみられなかった.胸水は滲出性でリンパ球優位であり,診断的治療として抗結核薬が投与されたが効果はみられなかった.胸腔鏡下胸膜生検を施行し,胸膜中皮腫は否定的であったため,良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚と診断し,2008年6月,当院に紹介された.頻回の胸腔穿刺や胸膜癒着術にも関わらず,両側胸水は悪化した.2008年12月,呼吸不全にて死亡した.剖検にて良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚の診断が確定した.石綿小体濃度測定を行い,乾燥肺1 gあたり石綿小体は462本であった.本症例の石綿暴露レベルは比較的低いと推測された.我々は剖検にて確認した稀な良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚の症例を経験したため報告する.

キーワード:良性石綿胸水, びまん性胸膜肥厚, 石綿曝露

受付日:平成22年2月19日

日呼吸会誌, 48(11): 821-824, 2010