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Article in Japanese

症例

長期間気管支喘息として診断されていた慢性血栓塞栓性肺高血圧症の1手術著効例

佐藤 峻1), 杉浦 寿彦2), 田邊 信宏2), 寺田 二郎2), 坂尾 誠一郎2), 笠原 靖紀2), 滝口 裕一2), 巽 浩一郎2)

1)千葉大学医学部医学科
〒260-8670 千葉市中央区亥鼻1-8-1
2)千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学

要 旨

長期間,気管支喘息と診断されていた慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の手術著効例を報告した.症例は70歳男性.労作性呼吸困難を主訴に近医にて気管支喘息として約15年加療されていた.しかし経口および吸入ステロイド療法にもかかわらず,症状増悪したため他院受診したところ慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)を疑われ,当院に紹介となった.右心カテーテル・肺動脈造影によりCTEPHと診断した.手術適応と判断し,肺血栓内膜摘除術を施行した.術後肺血行動態および症状の著明な改善が認められた.CTEPHは労作時の息切れのみを呈し,誤って,他の呼吸器疾患と診断されることも少なからず認められる.しかし,本症は特に外科的治療によって予後の大きな改善が可能であるため,本症を念頭におき,早期に的確に診断することが重要である.

キーワード:慢性血栓塞栓性肺高血圧症, 気管支喘息, 肺血栓内膜摘除術, 慢性閉塞性肺疾患, 労作性呼吸困難

受付日:平成22年3月24日

日呼吸会誌, 48(11): 836-841, 2010