日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

ステロイド投与中に接合菌症とニューモシスチス肺炎を合併した間質性肺炎の1剖検例

向笠 洋介1), 一安 秀範1), 赤池 公孝1), 岡本 真一郎1), 菰原 義弘2), 興梠 博次1)

〒860-8566 熊本県熊本市本荘1-1-1
1)熊本大学医学部附属病院呼吸器内科
2)同 細胞病理部

要 旨

症例は75歳男性.2009年5月に右頬粘膜腫瘍と診断され,その際に塵肺と間質性肺炎を指摘された.右頬粘膜腫瘍切除術後から間質性肺炎の増悪をきたし副腎皮質ステロイド剤による治療中であったが,治療開始38日後より著明な低酸素血症を認め入院となった.胸部CTでは,新たに全肺野にすりガラス状陰影と多発性空洞性病変を認めていた.入院時,血中アスペルギルス抗原が陽性で気管支肺胞洗浄液の培養検査にて糸状菌,細胞診にてPneumocystis jiroveciiが検出され,肺アスペルギルス症とニューモシスチス肺炎の合併と診断し,ボリコナゾール,ST合剤とステロイドパルス療法にて治療を開始した.第20病日から再度呼吸状態の悪化と血痰の出現を認め,入院時の検体から接合菌(のちにCunninghamella bertholletiaeと判明)が分離同定されたため,抗真菌剤をアムホテリシンBのリポソーム製剤へ変更したが,第38病日に永眠された.病理解剖にて,空洞内の壊死組織や空洞壁に接合菌の増生を確認した.接合菌症は生前の培養同定が困難であり,またニューモシスチス肺炎との合併例は,これまでに報告がなくきわめて稀な症例と考えられたので報告する.

キーワード:接合菌症, ニューモシスチス肺炎, 間質性肺炎, ステロイド治療

受付日:平成22年4月6日

日呼吸会誌, 48(11): 847-854, 2010