日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (860k)
Article in Japanese

症例

アスベスト曝露歴を有し,間質性肺炎と下位脳神経麻痺を合併したMPO-ANCA関連疾患の1例

宮崎 健二1), 福住 宗久2), 相澤 豊昭3), 柴田 雅彦1), 酒井 俊彦1), 戸島 洋一1)

〒143-0013 東京都大田区大森南4-13-21
1)独立行政法人労働者健康福祉機構東京労災病院呼吸器内科
2)独立行政法人国立病院機構災害医療センター呼吸器科
3)公立阿伎留医療センター呼吸器内科

要 旨

症例は65歳男性.約40年間の職業性アスベスト曝露歴がある.平成20年10月より発熱,咳があり,11月中旬初診.胸部CTで気腫性変化と胸膜下の線維化,胸膜プラークを認めた.気管支肺胞洗浄液ではリンパ球,好中球比率がそれぞれ15%,17%と上昇し,アスベスト小体を認めた.血液検査でMPO-ANCA値が188 EUと上昇,腎機能は正常範囲であった.アスベスト曝露を背景としたANCA関連間質性肺炎と考え,プレドニゾロン30 mg/日より開始し肺病変は改善した.治療開始1.5カ月後,頭痛,嚥下障害,嗄声が出現し,神経内科に再入院.血管炎に伴う肥厚性硬膜炎もしくは神経炎による第9~12脳神経麻痺と診断され,ステロイドパルス療法を行った.本例はANCA関連疾患の発症にアスベスト曝露が関与した可能性があり,ステロイド投与中にもかかわらず脳神経麻痺を発症した点も重要であると考える.

キーワード:アスベスト, 間質性肺炎, 血管炎, 抗好中球ミエロペルオキシダーゼ抗体, 下位脳神経麻痺

受付日:平成22年5月17日

日呼吸会誌, 48(11): 876-882, 2010