日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

原著

肺音聴診シミュレータを用いた肺音聴診実習の教育効果

有村 保次1)2), 小松 弘幸2)3), 柳 重久1), 松元 信弘1), 岡山 昭彦2), 林 克裕3), 中里 雅光1)

1)宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野
〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原5200
2)宮崎大学医学部附属病院卒後臨床研修センター
3)宮崎大学医学部医学教育改革推進センター

要 旨

目的:肺音聴診シミュレータ“Mr.Lung®”を用いた肺音聴診実習の教育効果を検討した.方法:医学科5年生を対象に,呼吸器専門医による講義とMr.Lung®を用いた実技の計90分の聴診実習を行い,実習前後で4つの副雑音の正答率を比較した.また,実習後の自己評価,過去の聴診経験やシミュレーション教育に対する意識を自記式質問票で調査した.結果:実習前の正答率は,全て40%以下でrhonchiが5%と最も低かった.正答率と過去の聴診経験の有無とは関係がなく,実習後の正答率は全て80%以上と有意に上昇した.質問票調査で,約90%の学生が全ての医師に肺音聴診能力は必要であり,シミュレータは技能の習得に有効であると回答した.結論:今回の検討は前後比較であるが聴診シミュレータを用いた肺音聴診実習がより高い教育効果を生み,また学生にとっても高いニーズがあり聴診技能習得に効果的な方略であることが示唆された.

キーワード:肺音, 聴診実習, シミュレータ, 副雑音, 医学教育

受付日:平成22年9月3日

日呼吸会誌, 49(6): 413-418, 2011