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Article in Japanese

症例

乳癌術後放射線照射後に発症した器質化肺炎の3例

岸川 孝之, 今立 博子, 平野 勝治, 中島 章太, 佐々木 英祐, 木下 明敏

〒856-8562 長崎県大村市久原2丁目1001-1
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター呼吸器内科

要 旨

乳房温存術後に胸部接線照射が施行された乳癌患者で,照射野外に肺胞性陰影を呈し,病理組織学的に器質化肺炎(organizing pneumonia;OP)と診断された3例を経験した.全例で乳房温存術後に胸部接線照射及びタモキシフェン(tamoxifen;TAM)による術後補助療法が施行されていた.2例は発熱,咳嗽にて発症し,1例は無症状で発見された.画像上全例で照射野外に及ぶ肺野末梢側優位の肺胞性陰影を認めた.気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage;BAL)では全例でリンパ球比率の上昇,うち2例では好酸球比率の上昇も認めた.経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy;TBLB)では全例でOPの所見を認めた.有症状の2例ではステロイド治療により速やかに症状,画像所見ともに改善した.無症状で発見された1例は自然経過で陰影は消失した.近年同様の症例の報告数は増加しているが,その発症機序は明らかでない.我々が経験した3例からは,放射線療法に併用されたTAMが発症に関与している可能性が示唆された.

キーワード:器質化肺炎, 乳癌, 放射線療法, 放射線肺臓炎, タモキシフェン

受付日:平成22年12月1日

日呼吸会誌, 49(6): 458-464, 2011