日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

膿瘍との鑑別が困難であった原発巣不明肺悪性黒色腫の1剖検例

望月 英明1), 筑井 恵美子2), 徳丸 阿耶3), 加藤 貴行4), 新井 冨生5), 高橋 英気1)

〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2
1)東京都健康長寿医療センター呼吸器内科
2)同 脳神経外科
3)同 放射線診断科
4)同 リハビリテーション科
5)同 病理診断科

要 旨

症例は84歳男性.下肢優位の右不全麻痺で発症し入院.左前頭頭頂葉と左小脳に出血を伴う腫瘍性病変,左肺に腫瘍性病変を認めたが,病理診断にはいたらなかった.肺癌の多発脳転移と診断し全脳照射を行ったが,経過中に肺膿瘍,脳膿瘍との鑑別が問題となった.呼吸不全で死亡し,剖検で肺,脳の腫瘍性病変は悪性黒色腫と診断されたが,原発巣は不明であった.肺の単発性悪性黒色腫は我が国では稀であるが,注意深い画像所見の解析により診断の糸口をつかむことは可能であった.

キーワード:悪性黒色腫, 肺, 膿瘍, 原発不明, 脳転移

受付日:平成22年12月16日

日呼吸会誌, 49(6): 472-477, 2011