一般社団法人日本呼吸器学会
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学術講演会抄録集

セッション名 COPD 病理・病態生理
PP641
 
肺組織における抗炎症効果としてのビタミンD受容体機能とその発現制御因子に関する検討
石井正紀,山口泰弘,中村友美,秋下雅弘(東京大学老年病科)

【目的】ビタミンDの摂取不足や血中濃度の低下は,COPDの増悪や肺機能低下と関与していることが報告されているが,肺組織におけるビタミンD受容体(VDR)を介したビタミンDの機能やVDRの発現量の制御については不明な点も多い.【方法】肺組織におけるビタミンDの役割とその特性を解析するため,肺特異的VDR過剰発現TGマウスを作製した.肺組織におけるIL-4,IL10,IL13,MIP-1α,IP10,MCP-1,MIP-2,MMP1,MMP12,TIMP-1について,RT-PCRおよび免疫組織染色を行い,抗炎症効果および組織保護効果を検証した.さらに,ラット2型肺胞上皮細胞を用いて,タバコ煙水抽出液(CSE)を負荷した際におけるVDRの発現量に関して,RT-PCRを施行した.【結果】TGマウスでは,Th1サイトカインの発現低下が認められ,免疫組織染色でも同様の傾向が認められた.さらに,2型肺胞上皮細胞におけるCSE負荷により,VDR発現量の低下が確認された.【結論】肺組織では,VDRを介して,Th1サイトカインの抑制による抗炎症効果とMMP産生抑制による肺組織保護効果が認められた.また,CSE負荷によるVDR発現量の負の制御が認められたことから,COPD患者における禁煙治療の重要性が示唆された.

日本呼吸器学会誌 第4巻増刊号 p.270(2015)