一般社団法人日本呼吸器学会
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学術講演会抄録集

セッション名 COPDの病因と病態生理
MS4-1
 
サイトカイン発現からみた気道炎症
室 繁郎(京都大学附属病院呼吸器内科)

 GOLDの定義によると、COPDは、完全に可逆的ではない気流制限を特徴とする疾患であり、この気流制限は通常進行性で、有害な粒子またはガスに対する異常な炎症反応と関連しているとされる。組織に遊走した炎症細胞は、各種プロテアーゼ、成長因子、サイトカインなどを分泌することによって、肺胞壁の破壊と杯細胞の増生、気道の過剰分泌などといった慢性気道炎症の病態を形成し、リモデリングの結果、非可逆的な気流閉塞をもたらすと考えられている。COPDにおける優位な炎症細胞は好中球、マクロファージ、CD8陽性Tリンパ球であるとされ、これらの遊走に関与するTNF-α、MCP-1、MIP-1α、IL-8などがCOPDの病態に深くかかわっていると考えられている。気管支洗浄、誘発喀痰、気管支粘膜生検組織などで、これらがCOPD患者の肺において増加していることがしられている。現在利用可能な抗炎症治療はグルココルチコイドであるが、これは炎症性サイトカインやケモカインの発現に必要なキナーゼや転写因子に作用することにより、炎症を抑制すると考えられている。しかしながら、いくつかの長期ないしは短期の治療成績は、気管支喘息とは異なり、COPDにおいては呼吸機能の改善や気道炎症の改善には効果的ではないことが示されている。今後は、COPDの抗炎症治療として、抗サイトカイン・ケモカイン療法が有望かもしれない。

日本呼吸器学会雑誌 第41巻増刊号 p.27(2003)