一般社団法人日本呼吸器学会
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学術講演会抄録集

セッション名 COPDの病因と病態生理
MS4-2
 
肺気腫の発症とアポトーシスの関連
笠原靖紀,巽浩一郎,栗山喬之(千葉大学大学院加齢呼吸器病態制御学)

 Vascular endothelial growth factor(VEGF)は血管内皮細胞の成長に特異的な増殖因子であり、肺で多量に発現されている。VEGF系シグナルは正常な肺構造の維持に必要な因子であり、喫煙によりVEGF系シグナルが低下すると、肺胞構成細胞にアポトーシスが生じて、気腫化が発症する可能性がある。人間の肺組織を用いた検討から肺気腫肺では正常肺と比べ、VEGFおよびVEGFR-2の発現が低下しており、肺胞の構成細胞により多数のアポトーシスをおこしている細胞を認めた。VEGFR-2キナーゼ特異的阻害剤・SU5416を慢性投与してVEGFおよびVEGF受容体(VEGFR-2)を介するシグナル伝達を阻害すると、血管内皮細胞や肺胞上皮細胞にアポトーシスを認め、肺胞腔の拡大(肺気腫性変化)が観察された。このSU5416投与ラットでは過酸化脂質などの酸化ストレスのマーカーが増加していた。SU5416投与ラットにさらにM40419(Metaphore)などのアンチオキシダントを投与すると、酸化ストレスが抑制されたと同時に、アポトーシスも抑制され、さらに気腫性変化も抑制された。これらの結果は、酸化ストレスとアポトーシスはともに肺気腫の発症機序の一つとして関与している可能性を示唆していると思われた。

日本呼吸器学会雑誌 第41巻増刊号 p.27(2003)