セッション名 | COPDの病因と病態生理 |
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肺気腫の進展には喫煙をはじめとした環境因子と遺伝的因子の両方が関与している。α1-antitrypsin欠損症以外の遺伝因子の関与は高度な閉塞性障害を認めるCOPD群と正常肺機能の対照群との間で多型頻度を比較するcase-control studyにより検討され、我が国からもTNF-α,Heme oxygenase-1など多数の遺伝子多型の関与が報告されてきた。私共の研究室では、metalloproteinaseとそのインヒビターとしてMMP-1,9とTIMP-2、cysteine proteinaseとそのインヒビターとしてcathepsin Sとcystatin Cの遺伝子多型を検討してきた。COPDの多様なphenotypeと多型の関連を調べるため、従来の解析に加え肺機能および胸部CT上の各種パラメーターと遺伝子型との相関を解析した。MMP-9とcathepsin Sのプロモーター領域の多型はCT上の気腫化スコアと、cystatin Cの多型は総肺動脈径と関連していた。一方、喫煙習慣を規定する因子としてニコチン代謝酵素CYP2A6の全欠損型多型について検討し、1日の喫煙本数ならびに気腫化スコアとの関連を報告した。このように肺気腫進展に関与しうる遺伝子は多数あり、いかにして候補遺伝子を選択するかが重要である。近年、米国において若年重症肺気腫患者の家族解析により、候補遺伝子の染色体上の位置に関する情報が示されつつある。我々は別のアプローチとして、重症肺気腫患者と対照喫煙者肺組織における遺伝子発現をマイクロアレイ法により比較し、情報の集積を試みている。