一般社団法人日本呼吸器学会
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学術講演会抄録集

セッション名 COPDの病因と病態生理
MS4-4
 
SP-Dノックアウトマウスでの肺気腫発症メカニズム
吉田光宏1),川瀬一郎1), Jeffrey A. Whitsett2)(大阪大学大学院医学系研究科分子病態内科1),Cincinnati Children's Hospital2)

 Surfactant Protein-D(SP-D)は43kDaの分泌蛋白質で、近年、間質性肺炎の血清マーカーとして注目されている。SP-Dの生体内での役割について解析する目的で、SP-Dノックアウトマウス(SP-D-/-)を作製した。SP-D-/-の肺では、予期せずに、3週間後より肺胞腔の拡大(気腫性変化)が観察され、年齢とともに進行した。SP-D-/-において、肺胞マクロファージからのMatrix metalloproteinase(MMP)-2,9,12およびH2O2産生が亢進していることが確認され、こういった攻撃因子―防御因子間の不均衡が気腫性変化発症の機序として考えられた。SP-D-/-の肺胞マクロファージをin vitroで培養し、各種抗酸化剤を培養液中に加えるとMMP発現が抑制されることを認めた。また抗酸化剤はマクロファージ内におけるNF-κB活性化も抑制した。さらにNF-κB inhibitorをマクロファージの培養液中に加えるとMMP発現が抑制された。このことはSP-D-/-においてMMP発現が、肺胞マクロファージから生じる活性酸素によりNF-κBが活性化することで制御されていることを示唆する。喫煙者のBAL液中のSP-D濃度は低下していると報告されており、ヒトの肺気腫においてもSP-D-/-と共通の機序で病変が進行している可能性があり、今回得られた知見はヒトの肺気腫の病態を理解し、新たな治療法の開発につながることが期待される。

日本呼吸器学会雑誌 第41巻増刊号 p.27(2003)