一般社団法人日本呼吸器学会
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学術講演会抄録集

セッション名 COPDの病因と病態―気道病変から肺胞病変まで―
S8-2
 
Breath condensate,誘発喀痰を用いた気道炎症の新たな評価法
室 繁郎(京都大学呼吸器内科)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease)は,有害な粒子またはガス(特に喫煙)により惹起される慢性炎症性肺疾患と捉えられるようになった.
 COPDの炎症を,非侵襲的に評価する方法として,高調食塩水吸入による誘発痰が広く用いられている.細胞成分の分画や,接着因子などの表面マーカー発現の評価,上清中の各種メディエイター(サイトカイン,ケモカイン,蛋白分解酵素とその阻害物質,ロイコトリエンなど)が解析されている.一方で,誘発痰においては,口腔内物質(特に唾液)の混入や,処理過程で使用するditheothreitolによる影響などが結果の解釈に厳密性を欠く要因となりうる.
 Exhaled breath condensate(EBC)は気道内被覆液由来の蒸気とエアロゾルを含むと考えられ,近年肺の炎症を評価する非侵襲的方法として注目されている.EBC中には,水溶性物質以外にも,サイトカイン,脂質,サーファクタント,8-isoprostane,アデノシン,ヒスタミン,また,揮発性・水溶性のアンモニア,過酸化水素などが検出可能であると報告されている.
 これらの非侵集的方法によって得られたデータが,気道炎症と肺胞破壊というCOPDの病態解明や,急性増悪や長期的な肺機能低下の予測といった臨床面に応用され得るか,今後の重要な検討課題であると考えられる.

日本呼吸器学会雑誌 第43巻増刊号 p.38(2005)