学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 血液培養からDesulfovibrio属が分離された8症例
論文言語 J
著者名 井田 陽子1), 荒木 光二1), 米谷 正太2), 奥山 貴洋1), 高木 愛美1), 平尾 千尋1), 本間 慎太郎1), 小倉 航1), 鈴木 美音1), 伊藤 彩花1), 堀口 彩花1), 関口 久美子1), 大西 宏明1,3)
所属 1)杏林大学医学部付属病院臨床検査部
2)杏林大学保健学部臨床検査技術学科
3)杏林大学医学部臨床検査医学教室
発行 臨床微生物:32(1),38─43,2022
受付 令和3年6月9日
受理 令和3年10月13日
要旨  Desulfovibrio属菌は,ヒトの消化管や膣に常在する偏性嫌気性グラム陰性桿菌で,稀に菌血症や肝膿瘍などを引き起こすが,まとまった報告は少ない。今回,当院で2012年から2020年の間に経験したDesulfovibrio属菌による菌血症8症例の患者背景,菌種同定および,薬剤感受性試験について検討した。
 対象となった期間に血液培養から分離された菌種は,“Desulfovibrio fairfieldensis”2症例とDesulfovibrio desulfuricans MB 6症例であった。症例の多くは,消化器疾患を合併した患者に一過性の菌血症を呈しており,患者の予後は良好であった。菌種同定検査は,16S rRNA遺伝子解析が最も有用であり,同定キットや質量分析法ではすべての菌株で同定不能となった。2菌株を用いて自施設でライブラリー登録を行った後に,質量分析法にて再測定したところ,他症例の菌株も正しく同定できた。
 薬剤感受性試験では,βラクタム系のMIC値について菌種による差を認め,菌種同定の重要性が示唆された。また,フルオロキノロン系には,一部に高いMIC値を示す株が存在し,菌株ごとの薬剤感受性試験の重要性が明らかとなった。clindamycin,metronidazole,minocyclineは,全ての菌株に対して良好な抗菌活性を示した。今後,質量分析法のライブラリーへの搭載や薬剤感受性試験の標準化が望まれる。
Keywords Desulfovibrio属, 血液培養, MALDI-TOF MS
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