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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 腸管出血性大腸菌複数回分離患者株のMLVAにおけるリピート数の変化
論文言語 J
著者名 佐藤 孝志, 牟田 萌枝子, 塚本 展子, 倉園 貴至, 福島 浩一, 岸本 剛, 本多 麻夫
所属 埼玉県衛生研究所
発行 臨床微生物:33(1),12─17,2022
受付 令和4年5月15日
受理 令和4年8月10日
要旨  腸管出血性大腸菌の分子疫学的解析手法であるMultiple-locus variable-number tandem repeat analysis(MLVA)は,集団感染事例の範囲の特定やdiffuse outbreakの探知に効果を発揮する。今回,無症状病原体保有者を含む患者便由来の臨床分離株を用いた同一患者生体内でのMLVAのリピート配列の変化に焦点を当てて調査を行った。同一患者の初回分離株と2回目以降の分離株のMLVAパターンの変化を見るために,2015~2018年にかけて同一患者から複数回にわたり分離された202株(61名分)についてMLVAによる解析を実施した。その結果,O157株では31名中7名(22.6%),O26株では30名中8名(26.7%)に初回分離株のMLVAパターンからの変化がみられた。また,分離回数5回以上のO157患者3名及びO26患者2名の便由来株を対象に各分離株につき12コロニーを釣菌し,MLVAによる解析を実施した。その結果,初回分離から5~8日経過した2回目の分離株で最初のパターン変化がみられた。このパターン変化のみられた3名のO157株の初回分離株を用いて継代培養を行ったところ,パターン変化がみられたのはいずれも継代40代以降であった。MLVAパターン変化と薬剤服用歴の間の明確な関連性は,今回は確認できなかった。
Keywords 腸管出血性大腸菌, MLVA, 複数回分離, パターン変化, 継代培養
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