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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
2013年から2020年における都内2次医療機関から分離されたLinezolid非感受性腸球菌の分子遺伝学的解析 |
論文言語 |
J |
著者名 |
伊藤 志昂1), 野村 隆浩2), 谷本 弘一3), 金子 奈緒実1), 吉田 美江子1), 大塚 昌信1), 中山 晴雄4), 松瀬 厚人4), 富田 治芳2,3) |
所属 |
1)東邦大学医療センター大橋病院臨床検査部
2)群馬大学大学院医学系研究科細菌学
3)群馬大学大学院医学系研究科附属薬剤耐性菌実験施設
4)東邦大学医療センター大橋病院院内感染対策室 |
発行 |
臨床微生物:33(1),36─43,2022 |
受付 |
令和4年7月29日 |
受理 |
令和4年9月26日 |
要旨 |
本研究では2013年1月から2020年12月の8年間に,都内2次医療機関にて分離されたLinezolid(LZD)non susceptibility enterococci(LNSE)の耐性メカニズムと分子遺伝学的関連性について検討を行った。各種臨床検体から分離され,薬剤感受性を実施した腸球菌2,191株のうち4株(0.002%)がLREで,Enterococcus faecium 1株,Enterococcus faecalis 3株であった。LNSE 4株は,E. faecium 1株で23S rRNA遺伝子domainV領域にA2504T変異,E. faecalis 1株で23S rRNA遺伝子domainV領域にG2576T変異がそれぞれ存在した。他のE. faecalis 2株はoptrA保有株であったが,cfr保有株,poxtA保有株は認めなかった。LZD耐性の伝達実験を行ったところoptrA保有の1株で液体培地中での伝達性が確認され,この株においてはoptrAがフェロモン反応性高頻度接合伝達性プラスミド上に存在する可能性が示された。
本研究結果から,国内で初めて高頻度接合伝達性を示すoptrA保有E. faecalisが検出されたことは,LZD使用による選択圧下においては耐性遺伝子が腸球菌に急速に拡散されるリスクがあることを示唆している。今後も医療機関や市中におけるLNSEの耐性メカニズム及び拡散状況について継続して調査して行く必要がある。 |
Keywords |
Linezolid, enterococci, 23S rRNA, optrA, 接合伝達性プラスミド |
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