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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 急性期高齢者医療専門病院におけるFilmArray装置導入による臨床的効果の検討
論文言語 J
著者名 野口 穣1,5), 瀧川 正紀2,5), 浅見 諒子1,5), 古川 友子1,5), 小原 朋也2,5), 前田 陽平2,5), 佐藤 衛2,5), 島﨑 良知2,5), 出﨑 奈美3,5), 小金丸 博4,5), 増田 義重1,5)
所属 1)東京都健康長寿医療センター臨床検査科
2)東京都健康長寿医療センター薬剤科
3)東京都健康長寿医療センター看護部
4)東京都健康長寿医療センター感染症内科
5)東京都健康長寿医療センター感染対策チーム
発行 臨床微生物:33(1),44─51,2022
受付 令和4年7月5日
受理 令和4年10月5日
要旨  FilmArray(FA)血液培養パネルは,血液培養から検出される主な細菌・真菌と3種の薬剤耐性遺伝子を約1時間で検出できる。FAは感染症診療への貢献が期待されるが,本邦におけるFA導入の有用性を検討した報告はない。そこで,急性期高齢者医療専門病院である当センターにおけるFA導入の臨床的効果を検討した。2019年5月から2020年4月の間でFA導入前を第一期,導入後を第二期とした。各期間におけるブドウ球菌属とカンジダ属菌血症症例の背景を比較し,臨床的効果を検討した。中間報告時間の比較では,ブドウ球菌属陽性例では第一期39.2時間,第二期11.1時間と,報告時間の有意な短縮がみられた(P<0.001)。カンジダ属陽性例では,第一期83.5時間,第二期13.9時間で統計学的有意差はないが,報告時間の短縮がみられた。de-escalationまでの日数の比較では,ブドウ球菌属陽性例において第一期4日,第二期3日,カンジダ属陽性例では,第一期8日,第二期6日と,第二期で日数の短縮が認められたが,統計学的有意差はなかった。入院中死亡率,血培陽性後30日以内死亡率は,第一期と第二期で統計学的有意差はなかった。VancomycinのAUD,DOTは第一期と比較して第二期で減少していた。FA導入は,抗菌薬適正使用に貢献する可能性が示唆された。一方,死亡率改善にはさらなる検討が必要と考えられた。
Keywords FilmArray, 血液培養, 抗菌薬適正使用, Staphylococcus aureus, Candida spp.
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