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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 ステロイド加療中に細菌性髄膜炎の経過を辿り糞線虫過剰症を来した1例
論文言語 J
著者名 花木 祐介1), 藤原 善寿2), 熱海 恵理子3), 大湾 勤子4), 国仲 伸男1)
所属 1)国立病院機構沖縄病院研究検査科
2)国立病院機構沖縄病院脳神経内科
3)国立病院機構沖縄病院病理診断科
4)国立病院機構沖縄病院呼吸器内科
発行 臨床微生物:33(4),285─289,2023
受付 令和5年3月15日
受理 令和5年6月5日
要旨  症例は70歳代,女性。原疾患であるシェーグレン症候群に対するステロイドにより加療中であった。ステロイド治療を開始し約1か月後に発熱を伴う意識障害が出現した。髄膜炎疑いとして髄液検査を実施したところ,多核球優位で,培養検査にてLactococcus garvieaeが検出された。抗菌薬投与にて解熱したが食欲不振が続き,経管栄養が開始された。しかし全身状態の改善は得られず,副作用のリスクも考慮してステロイドの減量をおこなった。その経過で,末梢血液中の好酸球数増多が認められ,悪心,心窩部痛などを含む消化器症状もみられたため便検査を実施し糞線虫が検出された。糞線虫症の診断でイベルメクチンの投与をおこない約1か月後に軽快退院した。
 糞線虫は亜熱帯に広く分布し,日本では九州南西部,特に奄美諸島,沖縄県全域が流行地域となっているため地域性(生活史・生活環境)などを考慮し,ステロイド投与中で免疫が抑制された状態の患者に対しては,糞線虫症を念頭に入れステロイド投与前に糞線虫スクリーニング検査を考慮すべきと考えられた。
Keywords 糞線虫症, ステロイド
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