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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Broad-range PCRによって同定されたVeillonella parvulaによる化膿性椎体炎の1例
論文言語 J
著者名 藤井 元輝1), 細川 直登1), 窪田 佳史1), 新山 優2), 渡 智久3), 大塚 喜人3)
所属 1)亀田総合病院感染症科
2)松山赤十字病院総合内科
3)亀田総合病院臨床検査部
発行 臨床微生物:33(4),290─295,2023
受付 令和5年4月5日
受理 令和5年6月8日
要旨  Broad-range PCR法による16S rRNA遺伝子の解析は,検体から細菌に共通な16S rRNA領域を増幅することで菌を検出する手法である。我々は,培養が陰性の化膿性椎体炎で,生検検体のbroad-range PCR法による16S rRNA遺伝子の解析で原因菌が同定された症例を経験したため報告する。78歳の女性が腰痛,両下肢の運動麻痺を主訴に受診した。MRIで胸椎Th9-Th11に化膿性椎体炎を疑う所見を認めた。入院日に発熱し,Escherichia coliが血液培養と尿培養から発育したため,急性腎盂腎炎と診断しceftriaxone(CTRX)を開始した。CTRX投与後に椎体の生検を行ったが培養は陰性であったため,椎体検体のbroad-range PCR法による16S rRNA解析を行い,Veillonella parvulaの遺伝子が検出された。歯周病と多数の齲歯があったことから,口腔内から侵入したV. parvulaによる化膿性椎体炎と診断し,抗菌薬はsulbactam/ampicillinに変更し,合計9週間の治療を行った。抗菌薬曝露があり,かつ抗菌薬の中止が困難な培養陰性の化膿性椎体炎では,broad-range PCR法による16S rRNA遺伝子の解析が有用と考える。
Keywords 化膿性椎体炎, Veillonella parvula, 16S rRNA遺伝子のシークエンス解析, Broad-range PCR
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