 |
日本臨床微生物学会雑誌
|
書誌情報
論文名 |
抗菌薬適正使用に貢献する薬剤感受性検査とは |
論文言語 |
J |
著者名 |
西村 翔 |
所属 |
兵庫県立はりま姫路総合医療センター感染症内科 |
発行 |
臨床微生物:34(1),1─17,2023 |
受付 |
令和5年9月24日 |
受理 |
|
要旨 |
抗菌薬適正使用支援では,医師及び薬剤師がイニシアチブを発揮すると捉えられがちであるが,実際には臨床検査技師の果たす役割は大きい。なぜなら,抗菌薬適正使用支援を円滑に進めるためには,正確な微生物学的診断が欠かせないためである。この微生物検査において,抗菌薬選択に最もインパクトを与えるのが薬剤感受性検査である。近年,遺伝子検査を含む分子学的診断に基づいた迅速診断検査の発展が著しいが,それでも最終的な表現型検査としての薬剤感受性検査は欠かせない。特に抗菌薬耐性に複数の耐性機序が関与しうるグラム陰性桿菌においては,薬剤感受性検査の結果が得られなければ最終的な標的治療を決定するのは難しく,臨床検査技師には正確かつ迅速な薬剤感受性検査の実施が求められている。また,迅速診断検査の結果の解釈は臨床医にとって困難なものとなっており,その結果を臨床医が利用できる情報に変換して適切なタイミングで報告されることで初めて迅速診断検査は活かされることになる。最後に,薬剤感受性検査の報告法は臨床医の抗菌薬選択に大きく影響する。不要な広域抗菌薬の感受性を報告することで,その広域抗菌薬が選択されるリスクを上げることになる。最終的に抗菌薬を選択するのが臨床医であるとしても,臨床検査技師はその抗菌薬選択の責任の一端を担っていることに自覚的になるべきである。 |
Keywords |
selective reporting, diagnostic stewardship, 薬剤感受性検査, rapid diagnostic test, アンチバイオグラム |
|