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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 グラム染色の水洗における水質の影響
論文言語 J
著者名 和田 京平1), 久保 勢津子1), 露木 勇三2), 柴田 祥子1)
所属 1)株式会社サンリツ臨床検査技術部
2)サンリツサービス株式会社
発行 臨床微生物:34(2),102─109,2024
受付 令和5年5月24日
受理 令和5年12月4日
要旨  細菌感染症において病原菌を迅速に特定することは重要である。一般細菌検査は塗抹,培養および薬剤感受性試験が行われる。培養や感受性試験は結果を得るまでに2~3日を要する一方で,塗抹検査は簡便かつ迅速な報告に優れている。なかでも日常多用されるグラム染色は染色性と形態観察によって菌種の推定ができることに加えて,組織細胞や炎症細胞の確認が可能であり,初期抗菌薬の選択に有用な情報となり得る1, 2
 夏季に,当施設でグラム染色の染色性が低下する事象が発生した。今回,この原因を追究するため染色性に影響する染色液を含めすべての工程を検討したところ,水洗の水道水と判明し水洗水としてイオン交換水を使用したことにより良好な染色結果が得られた。したがって,染色性低下の原因は水質であると判断された。
 そこで染色性の低下する夏季の外気温度・水温と染色に影響する水の硬度の影響について検討した。日常検査を想定し,水温は5℃~30℃,水質は硬度0 mg/L~304 mg/Lの範囲で調べた。その結果,染色性は水温5℃・硬度0 mg/Lの水洗水を用いた場合に最も良好であり,水温30℃・硬度304 mg/Lの水洗水が最も不良であった。
 グラム染色において,用いた水洗水は水温・硬度ともに低いほど良好な染色性を示した。他の因子の影響も否定できないが,グラム染色における水洗水の標準化は必要と考えられた。
Keywords グラム染色, 硬度, 水温, 迅速
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