学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 MALDI Biotyper・VITEK MSによるEnterobacter cloacae complex同定性能の評価
論文言語 J
著者名 加藤 翔也1), 三浦 美香1), 佐藤 未侑1), 中谷 美月1), 武田 夏音1), 和田 直樹1), 矢下 翔士2), 秋谷 学2), 松長 海輝3), 望月 真希4), 品川 雅明4)
所属 1)札幌徳洲会病院臨床検査室
2)札幌東徳洲会病院検査センター
3)市立三笠総合病院診療技術部臨床検査科
4)日本医療大学保健医療学部臨床検査学科
発行 臨床微生物:34(4),267─272,2024
受付 令和6年3月21日
受理 令和6年6月17日
要旨  Enterobacter cloacae complexは遺伝子類似性より分類が困難とされたE. cloacaeE. hormaecheiを主な菌種として含めて表記され,これらは生化学的性状,及びMALDI-TOF MSによる菌種同定は困難とされてきた。近年MALDI Biotyperのライブラリ更新により,Enterobacter属の登録菌株数が大幅に増加したが,同定性能を検証した報告はない。我々は,2022年9月から11月に札幌市内の2施設において分離されたE. cloacae complex 72株を対象として,全ゲノム解析による同定結果と質量分析装置MALDI Biotyper,VITEK MSによる菌名同定結果を比較し,2機種の同定性能を評価した。MALDI Biotyperでは,最新ライブラリ(Ver. 12.0.0.0,11897 MSPs)においてRank1位による一致は57株(79.2%),Rank10位以内に一致菌種を含むものは70株(97.2%)と高い一致率を示し,E. hormaecheiE. bugandensisの2菌種についてはRank10位以内に他の菌種が候補として挙がることはなく種名までの報告が可能と考えられた。VITEK MSでは単独で同定されたものはなく,複数菌種同定された中に一致菌種を含むものが23株で31.9%と低い一致率となり,いずれの菌種においてもE. cloacae complexとしての報告が望ましいと考える。
Keywords Enterobacter cloacae complex, 質量分析, MALDI Biotyper, VITEK MS
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