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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 全ゲノム解析によるESBL非産生キノロン耐性Escherichia coliの分子疫学解析
論文言語 J
著者名 吉村 公利1), 松村 康史2,3), 山本 正樹2,3), 長尾 美紀2,3)
所属 1)大阪府済生会野江病院臨床検査科
2)京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
3)京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
発行 臨床微生物:35(2),144─149,2025
受付 令和7年1月8日
受理 令和7年2月17日
要旨  フルオロキノロンはEscherichia coliに対する重要な治療薬であるが,耐性率は増加傾向にある。Extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生E. coliにおいては,キノロン耐性ST131クローンの増殖が知られているが,ESBL非産生キノロン耐性菌についての知見は十分でない。大阪市の急性期病院において,2018年~2021年に臨床分離された124株のESBL非産生キノロン耐性E. coliを対象に全ゲノムシーケンスを実施し,クローン性増殖およびその薬剤耐性機序について解析した。対象株は計12のSTに分類され,ST131(59%)とST1193(30%)がほとんどを占めていた。ST131のクレードはC1-non-M27が最多であった。ST131,ST1193すべての株が,キノロン耐性決定領域(QRDR)にそれぞれ特定パターンの4箇所変異および3箇所変異を有していた。ESBL非産生キノロン耐性E. coliの全ゲノム解析により,特徴的なQRDR変異を有するST131とST1193の二つのパンデミッククローンの増殖というESBL産生菌と類似した分子疫学が明らかとなった。国内におけるキノロン耐性E. coliの分子疫学解析の強化により,薬剤耐性菌対策の発展が期待される。
Keywords 大腸菌, ST131, ST1193, QRDR, クローン
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