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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
急性骨髄性白血病の化学療法中におけるRothia mucilaginosa (Stomatococcus mucilaginosus)による菌血症の1症例および本菌種における同定キットの同定性能の検討 |
論文言語 |
J |
著者名 |
福川 陽子1,2), 岡崎 充宏1), 大楠 清文3), 西山 宏幸4), 日暮 芳己5), 田内 絢子1), 奥山 貴洋1), 米谷 正太1), 牧野 博1), 澤田 範子1), 荒木 光二1), 高山 信之6), 江崎 孝行3), 大西 宏明7), 渡邊 卓1,7) |
所属 |
1)杏林大学医学部付属病院臨床検査部
2)東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科生体防御検査学分野
3)岐阜大学大学院医学研究科再生分子統御学講座病原体制御学分野
4)駿河台日本大学病院臨床検査部
5)東京大学医学部附属病院感染制御部
6)杏林大学医学部第二内科
7)杏林大学医学部臨床検査医学 |
発行 |
臨床微生物:20(1),50─55,2010 |
受付 |
平成21年10月9日 |
受理 |
平成21年12月14日 |
要旨 |
Rothia mucilaginosaは口腔内常在菌の1菌種であり,易感染性宿主においてまれに菌血症,髄膜炎および肺炎などの感染症の起因菌となる。われわれは,本邦において報告例のないR. mucilaginosaによる菌血症を経験した。症例は68歳,男性。治療抵抗性急性骨髄性白血病に対して化学療法を施行し,重篤な好中球減少および歯周炎・口腔内出血を合併していた。CPFX投与中に菌血症を発症,血液培養からグラム陽性球菌を検出し,細菌学的および遺伝学的検査によりR. mucilaginosaと同定された。本菌は市販の同定キットに菌名コードが付与されていないものが多いことから,各種同定キット(PMIC/ID-35,PC.6.1B,GPIカード,API STAPH,API Coryne,rapid ID 32 STREPおよびN-IDテストSP-18)を用いて本菌に対する同定性能について検討した。PMIC/ID-35およびGPIカードでは菌名コードが付与されており,正確に同定された。PC.6.1Bでは同定不能であり,他5キットでは他のグラム陽性菌種名と誤同定された。以上のことから,本菌は従来誤同定あるいは同定不能とされていた可能性があり,口腔内粘膜障害を伴う易感染性患者においては感染症の起因菌の一つとして留意する必要があると考えられた。 |
Keywords |
Rothia mucilaginosa, Stomatococcus, 同定キット, 菌血症, 好中球減少症 |
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