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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
MALDI-TOF MSを用いた臨床微生物学的検査の新しい潮流原理から応用まで |
論文言語 |
J |
著者名 |
小松 方 |
所属 |
天理医療大学医療学部臨床検査学科 |
発行 |
臨床微生物:26(2),79─89,2016 |
受付 |
平成28年2月9日 |
受理 |
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要旨 |
Matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry(MALDI-TOF MS,マトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型マススペクトロメトリー)を用いた細菌同定法が臨床微生物学分野に登場してから,すでに10年が経過しようとしている。わが国においても使用施設が年々増加しており,MALDI-TOF MS導入による微生物学的検査全般のturn-around timeが見直されている。MALDI-TOF MSは分離培養集落があれば,簡便かつ短時間で測定が完了する迅速同定法として注目されている。さらに,集落の前処理法の開発とデーターベースの充実が進み,嫌気性菌,Mycobacterium,Nocardiaおよび真菌の同定精度も向上している。髄液や尿,あるいは血液培養ボトル溶液などの液状検体は,夾雑蛋白質を除去するための30分~1時間程度の前処理法を施すことで,検体中に存在する細菌を直接的に同定が可能である。新しいβラクタマーゼ検査法として,抗菌薬の溶液と菌液を混合し,抗菌薬の加水分解によるβラクタム薬の構造変異に伴う分子量の変化をMALDI-TOF MSで検出する方法が考案されている。また基質拡張型βラクタマーゼ産生菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,ベロ毒素産生大腸菌等の臨床的に重要な耐性菌や毒素産生株のマススペクトルを,ソフトウェアを用いて多変量解析することで,菌群に特有のバイオマーカーの発見や疫学解析にも応用可能な方法として注目されている。 |
Keywords |
MALDI-TOF MS, 迅速同定検査, バイオマーカー, 疫学解析 |
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