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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Acinetobacter baumanniiにおける薬剤耐性とカルバペネマーゼ産生株の検出法
論文言語 J
著者名 上地 幸平1,2), 切替 照雄3,4), 藤田 次郎2), 前田 士郎1)
所属 1)琉球大学医学部附属病院検査・輸血部
2)琉球大学大学院医学研究科呼吸器・消化器・感染症内科学講座
3)順天堂大学大学院医学研究科微生物学講座
4)国立国際医療研究センター研究所感染症制御研究部
発行 臨床微生物:28(2),83─97,2018
受付 平成30年1月20日
受理
要旨  近年,カルバペネム系抗菌薬など様々な抗菌薬に対する薬剤耐性グラム陰性桿菌の拡散と増加が世界的な問題となっている。主に医療関連感染の原因菌として知られているAcinetobacter baumanniiはアシネトバクター属菌中でも最も分離頻度が高く,抗菌薬耐性を獲得しやすい性質を併せ持つことから臨床上特に重要である。世界的にOXA-23-likeカルバペネマーゼ産生株の蔓延や多剤耐性アシネトバクター属菌(Multidrug-resistant Acinetobacter species:MDRA)のアウトブレイク事例が数多く報告されており,我が国においてもMDRAのアウトブレイク事例は散発的に報告されている。2016年の厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)によると,アシネトバクター属菌のカルバペネム系など各種抗菌薬に対する感受性率は比較的良好であるが,今後注意すべき薬剤耐性菌の一つであると考えられる。A. baumanniiのカルバペネム系抗菌薬耐性機序で主体となるのはOXA-51-like(Intrinsic)やOXA-23-like,OXA-58-like(Aquired)などのCarbapenem hydrolyzing class D β-lactamase(CHDL)産生である。現在,アシネトバクター属菌のカルバペネマーゼ産生株における既存の表現型試験はその感度に問題があることが指摘されている。今後の拡散と増加を防止するためには正確な検出法が求められる。  本稿ではA. baumanniiを中心にアシネトバクター属菌の薬剤耐性について述べ,我が国のカルバペネマーゼ産生アシネトバクター属菌の現状とその検出法について概説する。
Keywords アシネトバクター属菌, Acinetobacter baumannii, カルバペネマーゼ, modified Hodge Test(MHT), CarbaNP test, Carbapenem Inactivation Method(CIM)
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