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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization-Time of Flight Mass Spectrometry(MALDI-TOF MS)導入前後のコストと同定時間に関する検証
論文言語 J
著者名 清祐 麻紀子1), 山下 有加1), 山崎 美佳1), 木部 泰志1), 諸熊 由子1), 下野 信行2), 堀田 多恵子1), 康 東天1,3)
所属 1)九州大学病院検査部
2)九州大学病院グローバル感染症センター
3)九州大学大学院医学研究院臨床検査医学分野
発行 臨床微生物:28(4),254─260,2018
受付 平成29年8月1日
受理 平成30年3月14日
要旨  Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization-Time of Flight Mass Spectrometry(MALDI-TOF MS)は従来の同定法と比較し,低コスト,迅速,簡便,高性能が特徴である。九州大学病院では2013年1月よりVITEK MS(ビオメリュー・ジャパン株式会社)を導入した。国内においてMALDI-TOF MSのコストに関する報告はなく,我々はVITEK MS導入前後におけるコストと同定時間を比較検証した。  VITEK MS導入前後(2011年,2015年)について,好気性菌,嫌気性菌,酵母様真菌を対象に同定キットとVITEK MSを用いた件数をカウントした。2011年,2015年の検体数は25,178件,25,994件,同定件数は3,425件,26,951件であった。コスト比較は,試薬コスト,経費コスト(試薬コスト+検査コスト),トータルコスト(試薬コスト+検査コスト+メンテナンスコスト)を算出し,同定時間は反応時間も含めた平均時間を算出した。  VITEK MS導入後,従来の同定キットの使用率は62.6%減少し,VITEK MSによる同定が26,112件と増加した。VITEK MS導入後,1件あたりの同定時間は平均848.9分から45.3分と約13.4時間短縮した。試薬コストと経費コストはわずかに減少していたが,トータルコストは増加していた。  VITEK MS導入により迅速同定が可能になるが,同定件数が増加する影響と,メンテナンスコストの加算によりコスト削減には繋がっていなかった。VITEK MS導入のメリットは迅速同定と菌種レベルの報告が簡便に実施できる同定精度の向上であり,これらは適切な抗菌薬の選択や,感染管理にも有用な情報になると考えられた。
Keywords MALDI-TOF MS, VITEK MS, コスト, 同定時間
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