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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Acinetobacter属菌のパルスフィールドゲル電気泳動法とリアルタイムPCR法,シカジーニアス分子疫学解析POTキット(アシネトバクター属菌用)を用いたタイピングの検討
論文言語 J
著者名 海宝 まゆ子1,2), 中澤 武司2), 樋口 綾子1), 大出 恭代1), 喜納 勝成1), 三宅 一徳1), 村田 健介2,4), 井上 貴昭5), 佐々木 信一2,3)
所属 1)順天堂大学医学部附属浦安病院臨床検査医学科
2)順天堂大学医学部附属浦安病院感染対策室
3)順天堂大学医学部附属浦安病院呼吸器内科
4)順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科
5)筑波大学附属病院救急・集中治療部
発行 臨床微生物:30(1),18─24,2019
受付 平成30年8月9日
受理 令和元年10月2日
要旨  当院では2014年よりAcinetobacter属菌の分離件数の増加を認め,パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用いて分子疫学解析を施行した。しかしPFGEは煩雑でコストと時間がかかるため,Acinetobacter属菌のうちアウトブレイクを起こしやすい株の迅速かつ簡便な識別を目的として,リアルタイムPCR法を用いて世界流行株とされるinternational clone II耐性遺伝子の検出を試みた。更にシカジーニアス分子疫学解析POTキット(アシネトバクター属菌用)による検討も加えて解析を行い,上記2法の有用性をPFGEの結果を基に比較検討した。2014年6月から2016年10月までに分離され,Acinetobacter属菌と判定された菌株は92株であった。92株のPFGE解析で,同一クローン(類似性≥90%)と判定された30株は,全て,リアルタイムPCR法においてblaOXA-51にISAba1が挿入されていた。耐性遺伝子のリアルタイムPCR法は,アウトブレイクを起こしやすい株を簡便に識別できた。シカジーニアス分子疫学解析POTキット(アシネトバクター属菌用)では,リアルタイムPCR法でblaOXA-51陽性の58株がすべてAcinetobacter baumanniiと同定され,さらにISAba1-blaOXA-51陽性の30株はPOT値1が全て122であった。POT値2と3によるクローンの型別では,122-24-55(33%),122-26-55(43%)が多くを占める5グループに分かれた。POT法は,短時間でアウトブレイクを起こしやすい株の識別と同一クローンの鑑別を同時に行うことができるが,一方で耐性遺伝子の検出はできないことが課題として挙げられた。
Keywords Acinetobacter属菌, 疫学調査, パルスフィールドゲル電気泳動法, リアルタイムPCR法, シカジーニアス分子疫学解析POTキット(アシネトバクター属菌用)
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