学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 結核検査の進歩とその臨床応用
論文言語 J
著者名 長谷川 直樹
所属 慶應義塾大学医学部感染症学教室・慶應義塾大学病院感染制御部
発行 臨床微生物:30(2),55─63,2020
受付 令和2年2月3日
受理
要旨  我が国の結核罹患率は漸減しており,2018年には12.3/10万であった。今後ますます減少し,数年で罹患率10を下回る低蔓延国になると予想される。一方,昨今若年者を中心に外国生まれの患者が増加しているが我が国の若者の大多数が結核未感染者であること,患者の多くは高齢者であり,通院の難しい症例も増加すること,結核の感染様式が極めて対策の難しい空気感染であること,などを鑑みると,活動性結核症例を的確に,かつ迅速に発見することが必要になる。診断の要は菌の検出であるが,昨今の核酸増幅法や遺伝子解析技術の進歩により診断法は大きく変化している。本稿では,臨床微生物学の観点から昨今の結核菌検査法や現在注目されている視点などについて概説する。核酸増幅検査では,検体の前処理から核酸の抽出,増幅,検出まで,全検査工程が自動化された機器が開発され実用化され,検査所要時間と感度から診断だけでなく隔離解除の判断にも活用されるようになってきた。さらに薬剤感受性試験も培養菌を用いる表現型検査から薬剤耐性関連遺伝子を検出するgenotype検査も注目されている。今後,これらの新技術の併用により検体採取から数時間にて,結核菌の検出と薬剤感受性まで判明するようになり,結核診療を一変させると予想されるが,その真価を最大に生かすために最も重要な点は良質な検体を得ることである。
Keywords Tuberculosis, IGRA, 全自動遺伝子検査, 隔離解除, 薬剤感受性試験
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