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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Mycobacterium arupenseによる滑膜炎の一例
論文言語 J
著者名 山本 絢子1), 齋藤 芳弘2), 太田 求磨3), 小泉 雅裕4), 大楠 清文5)
所属 1)新潟県立中央病院臨床検査科
2)新潟県立坂町病院検査科
3)新潟県立柿崎病院内科
4)新潟県立中央病院整形外科
5)東京医科大学微生物学分野
発行 臨床微生物:30(2),69─73,2020
受付 平成31年4月8日
受理 令和2年1月16日
要旨  Mycobacterium arupenseによる滑膜炎を経験したので報告する。症例は80歳代女性。骨髄異形成症候群,糖尿病,リウマチ性多発筋痛症にて当院通院中。半年前より右手関節橈側に皮下結節を自覚,膿瘍形成を認めたため,感染が疑われ治療が行われた。しかし,症状が改善しないため,膿瘍を穿刺し,培養提出された。膿瘍穿刺液の抗酸菌検査にて培養陽性となったが,DDH法で同定不能であった。その後も穿刺孔より排膿が続き,MRIにて屈筋腱鞘滑膜炎と診断され,滑膜切除術が行われた。滑膜切除時提出の関節液および滑膜の抗酸菌培養は,DDH法にて,Mycobacterium nonchromogenicumと同定された。DDH法の結果が一定しなかったため,精査目的で16S rRNA遺伝子解析を実施し,M. arupenseと同定された。M. arupenseは滑膜炎や骨髄炎での症例報告が多いが,本邦での報告は稀である。また,M. nonchromogenicumに類縁の菌種のため,本症例においてDDH法にて交差反応を示したと考えられた。非結核性抗酸菌(non-tuberculosis mycobacteria:NTM)による滑膜炎ではDDH法にてM. nonchromogenicumMycobacterium terraeと同定された場合,本菌の可能性も念頭に置き,遺伝子解析も検討すべきである。
Keywords Mycobacterium arupense, 非結核性抗酸菌, 滑膜炎
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