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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 薬剤耐性肺炎マイコプラズマの分子疫学
論文言語 J
著者名 鈴木 裕1), 阿部 修一2)
所属 1)山形県立中央病院検査部
2)山形県立中央病院感染症内科
発行 臨床微生物:30(3),117─126,2020
受付 令和2年5月20日
受理
要旨  肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は,小児・若年者の気道感染症の重要な起因菌であり,また発熱や長引く咳を主症状とするマイコプラズマ肺炎の起因菌である。M. pneumoniae感染症は2011年から2012年にかけて大流行したが,治療の第一選択薬であるマクロライド系抗菌薬(以下,マクロライド)に耐性を示すマクロライド耐性M. pneumoniaeが流行の主流を占めたため問題視された。分子疫学解析により,P1遺伝子1型で,特にmultiple-locus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA)型が4-5-7-2型,multi-locus sequence typing(MLST)型がST3またはST19のM. pneumoniaeのマクロライド耐性率が高いことが示されている。一方で,近年流行の主流を成すM. pneumoniaeのP1遺伝子の遷移現象が起きており,1型菌に代わってマクロライド耐性率の低い2型菌が増加しているため,全体としてM. pneumoniaeのマクロライド耐性率は低下傾向にある。今後はP1遺伝子2型菌のマクロライド耐性化の動向を監視していくとともに,医療機関はマクロライド耐性M. pneumoniaeを迅速に診断するため遺伝子検査の導入を推進し,次の流行に備える必要がある。
Keywords Mycoplasma pneumoniae, マクロライド耐性, 分子疫学解析, P1遺伝子型, MLVA
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