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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Helicobacter cinaediによる感染性動脈瘤の1例
論文言語 J
著者名 井村 留美子1), 邊見 里穂1), 大館 尚子1), 三浦 悠理1), 梅田 綾香1), 渡邊 由紀1), 中村 造2), 松本 哲哉3)
所属 1)東京医科大学病院中央検査部
2)東京医科大学病院感染制御部
3)国際医療福祉大学医学部感染症学講座
発行 臨床微生物:30(4),264─267,2020
受付 令和2年4月26日
受理 令和2年6月23日
要旨  Helicobacter cinaediは菌血症の原因菌として近年注目されているが,今回本菌による感染性動脈瘤の症例を経験した。患者は70代男性で高血圧と痛風の治療を受けていたが,背部痛と発熱を認め,精査目的で当院に紹介となった。受診時,激しい背部痛を認めたため造影CTが施行され,胸部および腹部大動脈の感染性動脈瘤と診断され入院となった。入院時に実施した血液培養が5日後に好気ボトルで陽性となり,Gram染色ではグラム陰性らせん菌が観察された。分離された菌は細菌学的性状,MALDI-TOF MS,および16S rRNAによる解析でHelicobacter cinaediと同定され,感染性動脈瘤の原因菌と診断した。治療面では,入院直後からセフトリアキソン(2 g/日)の点滴静注を行い,17日後にミノサイクリンの内服に変更し軽快退院となったが,ミノサイクリンは退院後も含めて計14週間継続した。本菌による感染性動脈瘤はまれであり,臨床的にも貴重な症例であると考えられるため,過去の報告例と併せて考察を行った。
Keywords H. cinaedi, 感染性動脈瘤, 質量分析, 16S rRNA
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