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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 小児急性中耳炎より分離された肺炎球菌のワクチン導入後における血清型と薬剤感受性
論文言語 J
著者名 髙島 且統1), 真崎 純子1), 小澤 大樹2)
所属 1)独立行政法人労働者健康安全機構東北労災病院中央検査部
2)東北大学耳鼻咽喉頭頸部外科
発行 臨床微生物:31(1),11─16,2020
受付 令和2年9月1日
受理 令和2年10月14日
要旨  肺炎球菌は急性中耳炎の代表的な原因菌である。本邦では2013年11月から13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)が導入されたが,PCV導入後にはPCVでカバーできない血清型の肺炎球菌が増加する菌交代現象が問題となっている。われわれは,PCV13導入後の菌交代現象を調査することを目的とし,2017年3月から2018年2月までに東北労災病院耳鼻咽喉科を受診し急性中耳炎と診断された小児の中耳貯留液検体を用い,培養検査により肺炎球菌と同定された44株の莢膜膨化反応による血清型の調査と薬剤感受性検査を実施した。44株中ペニシリン感性肺炎球菌は38.6%,ペニシリン中等度耐性肺炎球菌は40.9%,ペニシリン耐性肺炎球菌は20.5%であった。最も多く検出された血清型は15A(15.9%)で,次いで23B(11.4%)であった。7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)でカバーされる血清型は0%で,PCV13でカバーされる血清型は9.1%であった。血清型15Aはすべての株がペニシリン非感性株で,2歳未満で認められた。本研究で多く検出された血清型15A,23BはPCV13でカバーされておらず,菌交代現象が起きている可能性が示唆された。また,ペニシリン耐性率の高い血清型15Aが2歳未満で多く認められたことは,2歳未満で罹患しやすいとされる難治性急性中耳炎の病態の一因として留意しなければならないと考えられた。今後も血清型15Aの検出動向には注視する必要がある。
Keywords Streptococcus pneumoniae, 小児急性中耳炎, PCV13, serotype, 血清型15A
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