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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 日本のClostridioides difficile感染症の分子疫学
論文言語 J
著者名 加藤 はる, 妹尾 充敏
所属 国立感染症研究所細菌第二部
発行 臨床微生物:31(2),66─74,2021
受付 令和3年2月16日
受理
要旨  日本のClostridioides difficile感染症(CDI)に関して現在まで発表された報告のうち,分離菌株のタイピング解析が行われた研究報告について,アウトブレイク事例報告や症例報告も含めて概要し,日本のCDIの分子疫学について概説する。日本のCDI患者より最優勢に分離されるPCR-ribotype(RT)は,RT018関連タイプ(RT018,RT018’,RT018”,RT052を含む)であり,1990年代後半からの20年間で,この特徴に大きな変化はなかった。多くの調査研究では,RT018関連タイプ,RT014,RT002,RT369,RT017,RT001の6タイプが70%以上を占めていた。RT018関連タイプ,RT369,および,RT002は,日本の医療機関におけるアウトブレイクの流行株としても報告されている。Binary toxin(CDT)陽性株の分離率は,11%と報告された1検討以外では,2~6%と低かった。RT027菌株による院内アウトブレイク事例が2019年に1件報告されたが,本アウトブレイク事例以外の報告では,RT027およびRT078の分離は稀であった。日本における,RT027に代表されるCDT陽性菌株による感染は,北米やヨーロッパとは異なる特徴を有すると考えられた。日本では包括的なサーベイランスが実施されていないため,医療現場だけでなく行政においても,CDIに対する認識度・理解度が低い。日本のCDI感染実態を把握するために,菌株解析の実施を含めた全国的サーベイランス・システムを構築する必要がある。
Keywords Clostridioides difficile感染症(CDI), PCR-ribotype(RT), 医療関連感染, アウトブレイク, 日本
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