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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 増菌培養により感染経路が推定できた遅発型B群溶血性レンサ球菌髄膜炎の一例
論文言語 J
著者名 小林 延行1), 櫻田 穣2), 酒井 好幸3), 土田 晃輔3), 川口谷 充代4), 小林 宣道4)
所属 1)市立函館病院中央検査部検査情報センター
2)市立函館病院薬剤科
3)市立函館病院小児科
4)札幌医科大学医学部衛生学講座
発行 臨床微生物:31(2),82─86,2021
受付 令和2年2月5日
受理 令和2年11月9日
要旨  B群溶血性レンサ球菌(GBS)は新生児髄膜炎の原因菌の一つである。産婦人科診療ガイドラインでは,垂直感染予防を目的に母体の保菌検査と,その培養に選択培地が推奨されているが,コスト面などの問題から普及が十分とはいえない状態である。今回我々は,遅発型GBS感染児の母体膣培養を実施し,選択培地のみでGBSが同定され,感染経路の特定ができた症例を経験した。患者は日齢32の乳児で,発熱と活気不良のため当院に入院した。脳脊髄液中の細胞増多,脳脊髄液培養と血液培養からGBSを認めた結果,GBS髄膜炎と診断された。妊娠36週の母体膣培養は陰性であったため,改めて膣と乳汁の細菌培養を実施した。その結果,膣培養では羊血液寒天培地で陰性,選択培地のみでGBSが分離されたが,乳汁培養はともに陰性であった。検出した母のGBS株は,児からの分離株と同一であり母からの水平感染を示唆する結果となった。妊娠時のGBS保菌検査には,選択培地の使用が有用である。
Keywords Streptococcus agalactiae, 遅発型, 感染経路, 選択培地, 母児感染
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