学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

書誌情報


download PDF Full Text of PDF (464K)
Article in Japanese

論文名 岐阜県下におけるバンコマイシン耐性腸球菌の検出状況とその判定に関する問題点について
論文言語 J
著者名 山岡 一清1), 岩田 幾世2), 奥田 清保2), 松川 洋子3), 沢村 治樹4), 上野 一惠5)
所属 1)岐阜医療技術短期大学・衛生技術学科
2)岐阜県立岐阜病院・臨床検査部
3)岐阜県立多治見病院・臨床検査部
4)岐阜大学附属病院・中央検査部
5)岐阜大学名誉教授
発行 臨床微生物:15(2),77─81,2005
受付 平成16年12月7日
受理 平成17年4月8日
要旨  2003年1月~2004年7月までの間に岐阜県内の3病院において分離されたEnterococcus属(腸球菌)の検出状況を調査した。その結果,バンコマイシン耐性腸球菌が5株分離された。Enterococcus faecalisが尿と膿からそれぞれ1株ずつ,Enterococcus avium 1株が膿から,また,Enterococcus faecium 2株が糞便材料から分離された。これらの5株を,同定感受性検査を再検査するとともに,PCR法による遺伝子検査を行った。糞便材料から分離されたE. faeciumの1株が,E-testでMIC値:≧256 μg/mlと耐性でvanA遺伝子を保有していたことが判明した。その症例は,MRSA敗血症およびMRSA肺炎の治療のためにバンコマイシンを長期に使用されており,監視培養の目的で便培養を行ったところ,vanA遺伝子を有するVREが分離されたものであった。その他の4株については,同定検査は誤っていなかったが,感受性検査では,4株すべてが感受性となった。また,vanA, vanB, vanC1, vanC2遺伝子を保有していないことが確認され,感受性検査の誤りが判明した。感受性検査結果の誤りの要因は,明確にはできなかったが,接種菌量やコンタミネーションの有無などが考えられた。自動機器による腸球菌の判定では,VREと判定されたら,直ちに再検査を実施し報告をするべきである。また,院内感染拡大防止策の一環として,バンコマイシンを長期に使用している患者では便中の腸球菌など通常,感染有意菌と判断されない場合でも積極的な検査の実施を考慮すべきものと考えられた。
Keywords VRE, 誤判定, 院内感染, 院内感染対策, 監視培養
Copyright © 2002 日本臨床微生物学会 All rights reserved.