学会誌

日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Bacillus cereusによる偽アウトブレイクと清拭タオルの管理について
論文言語 J
著者名 井沢 義雄1), 伊藤 誠2)
所属 1)医療法人豊田会刈谷総合病院・臨床検査科
2)医療法人豊田会刈谷総合病院・病理・検査医学科
発行 臨床微生物:15(2),82─89,2005
受付 平成16年8月23日
受理 平成17年4月25日
要旨  当院は,2002年夏季から秋季にかけてBacillus cereusによる偽アウトブレイクを経験した。血管内留置カテーテル使用中の患者動脈血,留置カテーテルよりB. cereusを検出した。誘因は,清拭タオルの不適切な運用により B. cereusが常温で高濃度に繁殖,患者の皮膚に付着し血液培養採血時,または末梢静脈留置カテーテル施行時に汚染し検知されたものと考えられた。遠因としては,この時期の増改築工事による建物の取り壊しの際に土壌汚染菌であるB. cereusが病院環境に影響を与えた可能性がある。今回B. cereusが特に多く分離された理由は,清拭車による通常の60~75℃の加湿処理では清拭タオル中の芽胞をほとんど殺菌できないこと,また血液採取時のアルコール消毒にも芽胞は,耐性を示したことなどが考えられる。清拭タオル用に納入された乾燥タオルは,汚染状態にあり,それは,B. cereusを主とした数種類以上のBacillus属などのグラム陽性桿菌で,その菌量は年間を通し清拭タオルの使用状態で,103~104 CFU/mlレベルであった。追跡調査からは,ある病棟で血液培養の汚染菌として,B. cereusを検出したとき,清拭タオルからは,約1.5×104 CFU/mlの菌量を検出していた。清拭タオルの適切な管理が日本において特徴的な看護技術とされている清拭にとって重要である。
Keywords Bacillus cereus, 芽胞菌, 清拭, 清拭車
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