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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 塩酸バンコマイシンの薬物治療モニタリング(TDM)の必要性と注意点について
論文言語 J
著者名 佐藤 正一1), 斉藤 佳子1), 佐藤 洋子2)
所属 1)千葉県循環器病センター・検査部 検査科
2)千葉県こども病院・検査部 検査科
発行 臨床微生物:15(3),111─119,2005
受付 平成16年12月1日
受理 平成17年7月29日
要旨  抗菌薬治療の効果を最大に上げるには,対象患者に対する最適な抗菌薬の選択,用法・用量の設定,副作用に関するモニタリングが求められる。今回,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)治療薬として使用頻度の高い塩酸バンコマイシン(VCM)について検討した。2003年11月から2004年10月までにMRSAおよびメチシリン耐性表皮ブドウ球菌感染症のためVCM治療を実施した患者34例について,VCM投与の治療域1)であるトラフ値5~15 μg/mlとピーク値25~40 μg/mlの到達度をシミュレーション解析した結果,治療域に達している症例は21%で多くの症例で治療域以下の濃度であった。薬物治療モニタリング(TDM)を実施することは,治療域濃度へ投与法を変更できることから有用であると思われる。また,シミュレーション解析を行う際に重要な因子となるクレアチニンクリアランス(Ccr)の推測式について検討した結果,実測値と推測値の間には乖離する例が認められた。適正使用のためには実測Ccrによるシミュレーションが理想的であると考えられる。また,TDM業務を院内の微生物検査室で実施することは,病原菌の検出状況やMICなどの情報も把握していることから臨床に有用な情報を迅速にフィードバックできるメリットがあると思われる。
Keywords VCM, TDM, MRSA, クレアチニンクリアランス, PK/PD
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