日本臨床微生物学会雑誌：書誌情報

日本臨床微生物学会雑誌

書誌情報

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Article in Japanese

論文名	好気性培養で発育遅延となりMethicillin-resistant coagulase-negative staphylococciと誤同定されたMethicillin-resistant Staphylococcus aureus
論文言語	J
著者名	山本　雅枝1）, 川畑　大輔1）, 塚原　みゆき1）, 梅林　直美1）, 永野　貞明1）, 高橋　一郎2）, 後藤　美江子3）, 奥住　捷子4）, 大石　毅2）
所属	1）東京医科大学霞ヶ浦病院MBC検査室 2）同・感染症科 3）東京大学医科学研究所先端医療センター　感染症分野 4）獨協医科大学病院・医療安全管理部・感染防止対策部
発行	臨床微生物：15（3），126─133，2005
受付	平成17年3月28日
受理	平成17年8月22日
要旨	我々は，好気性培養で発育遅延するMethicillin-resistant Staphylococcus aureus（MRSA）株を5症例から7株分離した。いずれの菌株も臨床材料からの初代分離培養時に，35℃，5％炭酸ガス一夜培養でヒツジ血液寒天培地上に Staphylococcus aureus様の典型的集落を形成した。しかし，自動機器を用いた結果は，24時間では発育が認められず42時間後にMethicillin-resistant Staphylococcus capitis（MR-S. capitis）と表示された。このため，結果乖離の原因は培養条件の違いと考え，好気性培養と5％炭酸ガス培養の条件下で比較した。本菌株の集落形成には好気性培養で96時間，炭酸ガス培養で24時間を要し，発育速度が異なった。これらの菌株の培養条件による発育速度の差が，好気性培養で実施する同定検査およびClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)準拠法による薬剤感受性試験をも誤判定を招く結果となった。なお，今回分離された7菌株は，グラム陽性球菌，カタラーゼ陽性，7.5％食塩耐性，マンニット分解能など従来法による生化学的性状とspa遺伝子の保有を確認しStaphylococcus aureusと同定した。さらにmecA遺伝子を保有しており，遺伝子学的にMRSAと確認された。今後，本MRSAのように炭酸ガス培養が必須となる菌株の存在にも配慮し，好気性培養の重大なピットフォールとして広く認識されることを期待する。
Keywords	MRSA, 炭酸ガス培養, 好気性培養, 発育遅延, CNS, ピットフォール