|
日本臨床微生物学会雑誌
|
書誌情報
論文名 |
見逃されやすいチミジン依存性Methicillin-resistant Staphylococcus aureusの性状 |
論文言語 |
J |
著者名 |
谷本 綾子1), 藤原 弘光1), 田仲 祐子1), 中本 幸子2) |
所属 |
1)鳥取大学医学附属病院検査部
2)鳥取大学医学部保健学科 |
発行 |
臨床微生物:15(4),179─186,2005 |
受付 |
平成17年3月22日 |
受理 |
平成17年10月3日 |
要旨 |
敗血症患者から分離したmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)は,繰り返して分離しても血液寒天培地上では小型で大きさの不定な集落を形成した。これらの集落のうち集落形態の異なる3種類の菌株(T-1~T-3)を再分離して性状を調べた。分離したT-1株はMueller-Hinton寒天培地(M-H寒天培地)に接種した菌量の一部は集落形成できるが,他の株(T-2, T-3)はできなかった。これらの3株はMRSAとしての性状を有し,pulse-field gel electrophoresisで調べると同一パターンで,表現型においては異なるがclonalなvariant,すなわち小型コロニー変種(small colony variants;SCVs)であることが示唆された。これらの株をS. aureusやStaphylococcus epidermidis, Escherichia coli, Salmonella EnteritidisなどとM-H寒天培地で共培養すると集落形成し,発育が認められた。このことはこの小型集落MRSAも他の菌株の分泌する因子によりその増殖能を回復する可能性が示された。T-1株の増殖効果(plating efficiency)を調べると,この株はお互いの増殖をfeedingできる可能性が推測された。T-2,T-3株はM-H寒天培地にチミンやチミジンを添加すると増殖したことからチミジン依存性のSCVsであると考えられた。また,5%ヒツジ血液寒天培地でのsulfamethoxazole-trimethoprim感受性が耐性を示した。これらの結果から,この小型集落MRSAはチミジン合成系を障害された株で,その障害度が表現型として不安定な集団から構成されている可能性が示唆された。 |
Keywords |
小型コロニー変種, MRSA, 共培養, チミジン |
|