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日本臨床微生物学会雑誌
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書誌情報
論文名 |
アメーバ性大腸炎とBrachyspira pilosicoliによる腸管スピロヘータ症を合併した1例―アメーバ性大腸炎と腸管スピロヘータ症の合併例― |
論文言語 |
J |
著者名 |
田中 洋輔1), 長住 瑠美1), 青柳 恵美子1), 宮本 豊一1), 二階 亮2), 秋田 博伸3), 和田 昭仁4), 齋藤 典子5) |
所属 |
1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院・臨床検査部
2)同消化器内科
3)同小児科
4)国立感染症研究所・細菌第一部
5)同感染病理部・電子顕微鏡室 |
発行 |
臨床微生物:15(4),187─196,2005 |
受付 |
平成17年6月29日 |
受理 |
平成17年10月12日 |
要旨 |
Brachyspira pilosicoliは嫌気性スピロヘータで豚の結腸炎や慢性の下痢の原因菌として知られており,ヒトおよび霊長類,犬,齧歯類,鳥類などの腸管からも分離され広い宿主域を有している。腸管スピロヘータ症(intestinal spirochaetosis)はBrachyspira属菌が腸粘膜表層に大量に定着することにより,腹痛や慢性の下痢を起こすといわれている。我々はアメーバ性大腸炎の再発と腸管スピロヘータ症が合併した症例を経験し,B. pilosicoliを分離したので報告する。患者は東南アジアに渡航歴がある38歳男性。2002年3月頃から出血を伴う下痢を訴え,大腸内視鏡検査を実施した。生検病理組織よりEntamoeba histolyticaが検出されたため,アメーバ性大腸炎と診断されmetronidazoleが投与された。その後は自覚症状なく経過していたが,2004年10月頃より粘血便が出現したため,2005年1月4日,当院消化器内科を再受診した。患者は同性愛者であることを否定し,免疫機能の低下も証明されなかったが,2003年10月頃からミニブタをペットとして飼育していた。大腸洗浄液および便から活発な運動をする多数のらせん菌を認め,またE. histolyticaの嚢子型虫体も検出した。らせん菌はヘリコバクター寒天培地に嫌気環境下で4日目に発育した。本菌は血液寒天培地にも同様に発育し,特徴的な弱いβ溶血を示した。16S rDNA 配列解析を行った結果,99.8% Brachyspira pilosicoli(ATCC 51139)と一致した。 |
Keywords |
Brachyspira pilosicoli, intestinal spirochaetosis, spirochete, Entamoeba histolytica, amebic colitis |
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