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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 冬季に検出し得たVibrio vulnificus感染症の1例
論文言語 J
著者名 堀田 吏乃1), 橋本 好司1), 中田 一徳1), 菊間 幹太2), 佐川 公矯1)
所属 1)久留米大学病院 臨床検査部
2)久留米大学病院高度救命救急センター
発行 臨床微生物:16(1),1─7,2006
受付 平成17年5月16日
受理 平成17年11月17日
要旨  Vibrio vulnificusは,海水,汽水に生息し,肝硬変などの基礎疾患を有する患者に経口感染を起こす。V. vulnificus感染症は,夏季である7月から9月に多いが,今回冬季の11月に本症例を経験したので報告する。  患者は79歳,男性。肝硬変症の既往あり。2004年11月14日に,二枚貝のタイラギ(Atrina pectinata japonica)の貝柱を生のまま摂食後,下肢痛出現し動けなくなるが一人暮らしであったため,3日後の11月17日16時頃近所の人に発見されるまでそのまま放置されていた。近隣のA病院搬送後に,肝硬変の診断で通院・経過観察中であるB病院に転送となる。さらに同日20時頃,精査加療の目的で,当院救命救急センターに紹介入院となるが,翌日早朝に死亡した。なお,当院入院時の11月17日に処置された右下肢減張切開部の浸出液からV. vulnificusが検出された。一般に日本国内では,本菌が原因の壊死性筋膜炎後,敗血症性ショックによる死亡例は7月から9月の夏季に集中している。今回,我々は冬季の報告例がまれである11月に本症例を経験した。地球温暖化による海水温度の上昇,日本人の食習慣,輸入生鮮魚介類の増加などを考えると夏季のみならず冬季においても,本菌に感染しやすいハイリスクな方に対して,生鮮魚介類の摂食を年間通じて避けるように啓蒙活動が必要であると思われる。
Keywords Vibrio vulnificus, V. vulnificus infection in winter season, import of fresh fish and shellfishes
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