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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 久留米大学病院で検出された多剤耐性緑膿菌に対する抗菌薬の併用効果
論文言語 J
著者名 福島 奈央, 棚町 千代子, 橋本 好司, 堀田 吏乃, 中田 一徳, 佐川 公矯
所属 久留米大学病院臨床検査部
発行 臨床微生物:16(3),127─133,2006
受付 平成17年11月18日
受理 平成18年7月24日
要旨  久留米大学病院では,細菌の同定・感受性試験は,Micro Scan Walk Away96(デイドベーリング)を使用し,2002年1月から2005年3月までの39カ月間に,35株の多剤耐性緑膿菌(Multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa; MDRP)を検出した。この35株を対象とし,MDRPの各種抗菌薬に対する感受性を調べる目的で,Etest(AB BIODISK)による薬剤感受性の再測定を行った。最も高い感受性率を示した抗菌薬はceftazidime(CAZ)であり,CAZ感受性株は25株(71.4%), CAZ耐性株は10株(28.6%)であった。CAZに耐性を示した10株については,ほかに有効な抗菌薬が認められなかったため,Etest配置換え方式にてFIC indexを算出することによって併用効果を判定した。Cefepime(CFPM)とciprofloxacin(CPFX)の併用では,4株(40%;相乗効果1株,相加効果3株)に併用効果が認められた。Aztreonam(AZT)とamikacin(AMK)の併用では,10株(100%;相乗効果7株,相加効果3株)に併用効果が認められた。しかし,このうち5株はメタロ-β-ラクタマーゼ産生株であり,AMKの併用時のMIC値は32~64 μg/mlと高値を示し,臨床においては中毒域に達するため安全に使用できる範囲ではなかった。一方,メタロ-β-ラクタマーゼ非産生株5株のうち4株は臨床でも使用できるMIC値を示しており,AZTとAMKの併用療法の効果が期待できた。メタロ-β-ラクタマーゼを産生するMDRPにおいては,ほとんどの抗菌薬に高度耐性を示し,今回の検討で用いた薬剤の組み合わせでは臨床での薬剤併用効果は期待できないと思われた。よって,今後それらの株に対して臨床でも効果が期待できる薬剤併用の組み合わせについて,さらに検討していく必要がある。
Keywords 多剤耐性緑膿菌, メタロ-β-ラクタマーゼ, 併用効果, FIC index
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