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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 Nocardia brasiliensisによる限局型皮膚ノカルジア症―レボフロキサシンの効果が示唆された1例―
論文言語 J
著者名 大隈 雅紀1), 池田 勇2), 永沢 善三3), 小野 友道4)
所属 1)熊本大学医学部附属病院中央検査部(前 社会保険大牟田天領病院検査室)
2)社会保険大牟田天領病院皮膚科
3)佐賀大学医学部附属病院検査部
4)熊本大学(副学長)
発行 臨床微生物:16(3),145─150,2006
受付 平成17年11月1日
受理 平成18年5月8日
要旨  限局型皮膚ノカルジア症で,比較的まれなNocardia brasiliensisを分離した1例を経験した。症例は75歳男性,平成13年7月に古家の床を踏み抜き左膝に受傷した。その後,受傷部位が壊死を伴う潰瘍となり,周囲に小瘻孔の多発および膿汁の排出を認めた。局所を軽くデブリードメントし,cefdinir内服の投与を開始したが改善傾向がみられないためlevofloxacin(LVFX)内服に変更した。抗菌薬変更後,2日目から潰瘍の縮小と膿汁の減少が認められ,2週目には創面は閉鎖した。排出した膿汁からN. brasiliensisが分離され,臨床所見と併せ限局型皮膚ノカルジア症と診断された。LVFXの投与は6週間継続し,2年以上再発は認めていない。皮膚ノカルジア症の治療には,有効性の面からsulfamethoxazole/trimethoprimが第一選択薬となるが,菌種の同定および薬剤感受性試験による抗菌薬の情報で選択薬剤の幅が広がる。本症例ではLVFXは薬剤感受性試験および臨床効果において優れた成績を示した。キノロン系薬の長期投与には耐性化が懸念されるが,他の薬剤が使用できない場合には治療薬として有用であると考えられた。
Keywords cutaneous nocardiosis, Nocardia brasiliensis, levofloxacin
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