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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 市販の薬剤感受性試験用プレート4種類を用いたHaemophilus influenzaeの薬剤感受性測定結果の比較
論文言語 J
著者名 清水 千裕, 中村 竜也, 笠原 麻友美, 奥田 和之, 中田 千代, 藤本 弘子, 大倉 ひろ枝, 高橋 伯夫
所属 関西医科大学附属枚方病院臨床検査部
発行 臨床微生物:18(2),90─99,2008
受付 平成19年1月24日
受理 平成20年4月18日
要旨  Haemophilus influenzaeH. influenzae)の薬剤感受性試験には,Haemophilus Test Medium(HTM培地)1), 2)と5%馬溶血血液加Mueller-Hinton broth(b-MHB培地)3)が用いられている。近年,β-lactamase非産生ampicillin(ABPC)耐性菌(BLNAR)が問題となっており,その正確なMIC値の評価が重要である。そこで,フローズンプレート栄研(栄研F),ドライプレート栄研(栄研D),オプトパネル極東(極東O),および日水RAISUS(日水R)におけるH. influenzae薬剤感受性試験の性能について比較,評価した。検討した77株中,栄研Fと栄研Dで2株,日水Rで10株,極東Oで13株が発育不良であった。CLSI推奨のHTM培地を採用している極東Oを基準とした各パネルでのABPCの相関は,各パネルともに87%以上と良好であった。BLNARと判定される株の割合は,栄研Fで18.0%,栄研Dで19.7%,極東Oで39.3%,日水Rで37.7%と相違を認めた。ABPCのMIC値とPBP-3遺伝子変異との比較では,β-lactamase非産生ABPC感受性株において95%以上の相関があった。HTM培地に非発育であった13株中4株(BLNAR 1株,Low-BLNAR 3株)の遺伝子変異株では,b-MHB培地における発育が弱く,MIC値が低く判定され,感受性と判定される株があった。また,b-MHB培地に発育し,HTM培地で発育不良であった9株中1株を用いて,HTM培地での発育を経時的に測定したところ,接種後5時間までは増殖が認められたが,その後菌量が減少した。以上より,H. influenzaeの薬剤感受性検査は,培地や方法によりMIC値が変動するため,その特徴を理解して測定結果を判定する必要があると思われた。
Keywords Haemophilus influenzae, ampicillin, BLNAR, HTM, MHB
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