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日本臨床微生物学会雑誌

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Article in Japanese

論文名 パラフィン包埋試料からの遺伝子invAの証明が診断に有効であったnontyphoid Salmonellaによる感染性腹部大動脈瘤の1剖検例
論文言語 J
著者名 井上 由香, 伊藤 誠, 奥川 勝, 蔵前 仁, 松井 奈津子, 井沢 義雄, 酒井 昭嘉
所属 刈谷豊田総合病院臨床検査科
発行 臨床微生物:18(2),109─113,2008
受付 平成19年5月2日
受理 平成20年2月21日
要旨  糖尿病患者に発症した非チフス性サルモネラによる感染性腹部大動脈瘤の1例を経験した。患者は62歳,男性で,38℃台の発熱,腰痛を主訴に入院した。高血糖状態の補正を行うと同時に,血液培養を施行した。感染源究明のためCT検査を施行したところ,腹部大動脈下端に切迫破裂の腹部大動脈瘤が発見された。抗菌薬の経験的投与を行ったが,第3病日からタール便が出現しショック状態となり死亡した。剖検で腹部大動脈壁の粥状硬化部の破綻と後腹膜脂肪組織の急性化膿性蜂窩織炎が認められた。直接死因は胃潰瘍からの消化管出血であった。血液培養からSalmonella enterica serovar. Enteritidisが検出されたが,動脈瘤破綻部位の病理組織標本では菌体の証明が困難であったため,ホルマリン固定パラフィン切片からPCRによるサルモネラ属に特異的な病原遺伝子invAの増幅を試みた。その結果,100 bp前後の短いDNA断片については増幅が可能であり,起炎菌の同定の一助として有効な手段であった。
Keywords nontyphoid Salmonella, 感染性大動脈瘤, 病原遺伝子, PCR, 病理解剖
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